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エントリーNO.80
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
茶の湯によって精神を修養し、交際の礼法をきわめるのが茶道である。 その理想は、禅でいうところの「自性了解」の悟りの境に至ることにある。 このほんは、そうした「茶」を西洋人に理解させるため著者が英文でニューヨークの一書店から刊行したもので、 単なる茶道の概説書ではなく、日本に関する独自の文明論とも言うべき名著。
  解説=福原麟太郎

発行
 岩波文庫 2009年5月7日 第108刷
著者名
 岡倉 覚三 (おかくら かくぞう)
タイトル
 茶の本 (ちゃのほん)
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

   第 一 章   人情の椀
 茶は薬用として始まり後飲料となる。シナにおいては八世紀に高雅な遊びの一つとして詩歌の粋に達した。 十五世紀に至り日本はこれを高めて一種の審美的宗教、すなわち茶道にまで進めた。 茶道は日常生活の俗事の中に存する美しきものを崇拝することに基づく一種の儀式であって、 純粋と調和、相互愛の神秘、社会秩序のローマン主義を 醇々(じゅんじゅん) と教えるものである。 茶道の要義は「不完全なもの」を崇拝するにある。いわゆる人生というこの不可解なもののうちに、何か可能なものを成就しようとするやさしい企てであるから。
 茶の原理は普通の意味でいう単なる審美主義ではない。というのは、倫理、宗教と合して、 天人(てんじん) に関するわれわれのいっさいの見解を表わしているものであるから。 それは衛生学である、清潔をきびしく説くから。 それは経済学である、というのは、複雑なぜいたくというよりもむしろ単純のうちに慰安を教えるから。 それは精神幾何学である、なんとなれば、宇宙に対するわれわれの比例感を定義するから。

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