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エントリーNO.75
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
「これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです」。 ここには「風の又三郎」をはじめ、「セロひきのゴーシュ」「猫の事務所」 「ざしき童子のはなし」「なめとこ山の熊」「グスコープドリの伝記」など、 ふるさとの山や川に深く結ばれた作品を中心に19篇を収めた。

発行
 岩波文庫 2009年3月5日 第84刷
著者名
 宮沢 賢治(みやざわ けんじ)
タイトル
 風の又三郎 (かぜのまたさぶろう)他十八篇
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  風の又三郎
   どっどど どどうど どどうど どどう
   青いくるみも吹きとばせ
   すっぱいかりんも吹きとばせ
   どっどど どどうど どどうど どどう
 谷川の岸に小さな学校がありました。
 教室はたった一つでしたが生徒は三年生がないだけで、あとは一年から六年までみんなありました。 運動場もテニスコートのくらいでしたが、すぐうしろは (くり) の木のあるきれいな草の山でしたし、 運動場のすみにはごぼごぼつめたい水を () く岩穴もあったのです。
 さわやかな九月一日の朝でした。青ぞらで風がどうと鳴り、日光は運動場いっぱいでした。黒い 雪袴(ゆきばかま) をはいた二人の一年生の子がどてをまわって運動場にはいって来て、 まだほかにだれも来ていないのを見て、「ほう、おら一等だぞ。一等だぞ。」とかわるがわる叫びながら大よろこびで門をはいって来たのでしたが、 ちょっと教室の中を見ますと、 二人(ふたり) ともまるでびっくりして棒立ちになり、 それから顔を見合わせてぶるぶるふるえましたが、ひとりはとうとう泣き出してしまいました。

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