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エントリーNO.73
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
たゆまぬ努力と忍耐、そして何よりも深い愛情をこめて虫を観察し、 推理と実験を重ねて昆虫の本能と習性をつきとめていったファーブル(1823-1915)。 詩情あふれるその筆致は、数知れぬ熱烈な「昆虫記」ファンを生んできた。 原書と同じく10分冊とし、各巻に虫名索引を付した。

発行
 岩波文庫 2005年9月15日 第12刷
訳者名
 山田 吉彦 (やまだ よしひこ)、林 達夫(はやし たつお)
タイトル
 ファーブル昆虫記(ファーブルこんちゅうき) 全10冊
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

 事のなりゆきはこんな工合だった。我々は五人か六人だった。私は一番年上でみんなの先生であったが、 それ以上に仲間であり、友達だった。彼ら少年たちは燃え易い心と楽しい空想とを持ち、 我々に好奇心を (そそ) り、知識欲にかりたてるあの人生の春の潮に満ち満ちていた。 一同はあのことこのことを語り合いながら、小径を歩いてゆくと、道ばたに生えたくさにわとこやさんざしの 散房花(さんぼうか) の上では、 もうきんはなむぐりが強い匂いに酔いしれていた。我々はレ・ザングルの砂土の高台に、聖たまこがねがもう姿をみせて、 古代のエジプト人が地球の像とした糞の団子を転がしているかどうか見に行くところであった。 また我々が調べようとしていたのは、丘のふもとの小川では、敷きつめたようなうきぐさの下に 珊瑚(さんご) の小枝に似た (えら) のある若いいもりがかくれてはいないか、 小川のきゃしゃな小魚のとげうおは藍と緋の婚礼の首飾りをもうつけたかどうか、 また帰って来たつばめはあのあざやかな (かけ) り方で牧場をかすめ、 円舞の間に卵を () くががんぼを 掃蕩(そうとう) していないか。 砂岩に掘った巣穴の玄関で、いぼとかげが藍色の斑を散らした尾を陽にさらしていないか。 淡水に卵を生もうとローヌ河を (さかのぼ) る魚の群を追って、 かもめが群をなして海から上り、河の上を飛びながら時々気違いの高笑いのような叫び声をあげていないか。 それから、、、、いや、まあこのくらいにしておこう。 要するに、単純で素直で、生き物と一緒に暮すことに心の底から喜びを感ずる我々は、春の生命の目醒めという楽しい饗宴のうちに、朝の幾時間を過そうと出かけたのだ。
  (サイト管理人 注 五行目 ”散房花”の”さん”旧字見当たらず。)

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