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エントリーNO.68
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
銘酒屋菊の井のお力には結城という愛人があったが、お力に入れあげて落ちぶれた蒲団屋の源七に殺される。 「にごりえ」は一葉が写実作家としての地位を確立した作品。 東京の下町を舞台に、美登利、正太郎、信如を中心とする思春期の少年少女を描いた「たけくらべ」は、 わが文学史上の希代の名篇。明治28年。
 解説=和田芳恵

発行
 岩波文庫 2008年5月23日 第11刷
著者名
 樋口 一葉 (ひぐち いちよう)
タイトル
 にごりえ・たけくらべ
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

   にごりえ
  一
おい木村さん (しん) さん寄ってお (いで) よ、 お寄りといつたら寄つても () いではないか、 又素通りで二葉やへ () く気だろう、 押かけて () つて引ずつて来るからそう思ひな、 ほんとにお (ぶう) なら帰りに 吃度(きっと) よつてお呉れよ、 (うそ) () きだから何を言ふか知れやしないと店先に立つて 馴染(なじみ) らしき (つッ) かけ下駄の男をとらへて小言をいふような物の言ひぶり、 腹も立たずか言訳しながら 後刻(のち) に後刻にと行過るあとを、 一寸(ちょっと) 舌打しながら見送つて (のち) にも無いもんだ来る気もない癖に、 本当に女房もちに成つては仕方がないねと店に向つて (しきい) をまたぎながら一人言をいへば、 (たか) ちゃん 大分御述懐(だいぶごじつかい) だね、 何もそんなに案じるにも及ぶまい 焼棒杭(やけぼっくい) と何とやら、 又よりの戻る事もあるよ、心配しないで (まじない) でもして待つが宜いさと慰さめるやうな 朋輩(ほうばい) 口振(くちぶり) (りき) ちゃんと違つて (わた) しには 技倆(うで) が無いからね、 一人でも逃しては残念さ、私しのやうな運の () るい者には呪も何も聞きはしない、 今夜も 又木戸番(きどばん)

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