エントリーNO.543
岩波文庫を1ページ読書
変身・断食芸人

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

ある朝目覚めてみると、青年ザムザは一匹のばかでかい毒虫と化していた----。 確たる理由もなく、とつぜん1人の青年に悪夢のような〈現実〉が襲いかかる。 それにともない、ザムザへの家族の態度にも変化のきざしがあらわれはじめ・・・。 カフカ(1883-1924)はその過程を即物的な筆致でたんたんと描き切った。〈現代の寓話〉2篇。〈改訳〉

発行
岩波文庫 2004年9月16日 改版第1刷
著者名
カフカ   
タイトル
変身・断食芸人 (へんしん・だんじきげいにん)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    変身
   1
 グレゴール・ザムザはある朝、なにやら胸騒ぐ夢がつづいて目覚めると、ベッドの中の自分が一匹のばかでかい毒虫に変わっていることに気がついた。 甲羅(こうら) のように硬い背中を下に、仰向けで彼は寝ており、ちょっと頭を持ちあげると、 (まる) くもりあがった褐色の、弓なりにいくつもの環節に分かれた自分の腹部が見えたが、 てっぺんには掛けぶとんが、今にもずり落ちそうになりながら、かろうじてなんとか踏みとどまっている。 目の前には、からだに比べて情けないほどにか細い脚が、おびただしく頼りなげにちらちらしていた。
 「いったい、どうしたっていうんだろう」と彼は考えた。夢ではなかった。部屋はたしかに自分の部屋、狭いながらも人間の住むまともな部屋が、 勝手知った四方の壁に囲まれて静まりかえっている。


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