エントリーNO.538
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日はまた昇る

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

第一次世界大戦後のヨーロッパ。アメリカを捨てて根無し草的生活をつづける青年ジェイクと女主人公ブレット、 そして彼らをとりまく若者たち。 理想を失った青春のエネルギーがスペインの夏の祭りに爆発する。 ”失われた世代”の姿を力強いリズムとドライな文体で描破して熱狂的な反響をよんだヘミングウェイ(1899-1961)の出世作。

発行
岩波文庫 2007年7月6日 第60刷
著者名
ヘミングウエイ  
タイトル
日はまた昇る (ひはまたのぼる)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一部
      第一章
 ロバート・コーンてのはその昔、プリンストン大学のミドルウェイト級ボクシング・チャンピオンだったんだ。 といったところで、このぼくがボクシングのタイトルぐらいにすっかり感心してるととらないでくれ、タイトルを大いにありがたがったのはコーンのほうなのだ。 やつもボクシングなぞ、はなから好きだったんじゃない、実をいうと、いやだったのだが、それを苦労しながら最後までやりとげたのは、 プリンストン時代にユダ公あつかいされて心にいだいた劣等感やびくつく気持ちを克服するという目的があった。ふざけた野郎はどいつでもノック・ダウンしてやれると自信がつけば、 多少は憂さも晴れようというものだ、もっとも、ばかに内気だし、すこぶる気のいいやつだから、 道場(ジム) 以外で人をなぐったことはない。 スパイダー・ケリー門下の花形だったのだ。 スパイダー・ケリーは体重のことなどかまわず、若い連中をいっしょくたにしてフェザー級の拳闘を教えていた、体重が百五ポンドあろうが二百五ポンドあろうが、一切おかまいなしにだ。 ところがコーンには、これがぴったりきたらしい。実際、一気にうまくなった。あんまりうまいんでスパイダーは早くから段ちがいの相手と取り組ませ、おかげでやつの鼻は永遠につぶれる運命をになった。 これでコーンの拳闘ぎらいはいよいよひどくなったが、またそこに妙な満足感もないことはなかったし、つぶれたおかげでやつのユダヤ鼻がかっこうよくなったのもたしかだ。


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