エントリーNO.534
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シェークスピア物語

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

メアリー(一七六四〜一八四七)とチャールズ(一七七五〜一八三四)のラム姉弟が、 シェイクスピアの戯曲のなかから四大悲劇をはじめ二〇篇を選んで、それぞれ物語に改作。 多くの言語に翻訳され、二〇〇年以上にわたって世界中の少年少女や大人たちに愛読されてきた。(全二冊)

発行
岩波文庫 2008年6月17日 第1刷
著者名
チャールズ・ラム メアリー・ラム   
タイトル
シェークスピア物語 (シェークスピアものがたり) 全2冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    あらし
 海の中に、島がひとつ浮かんでいました。その島に住んでいるのは、プロスペローという老人と、その娘のミランダという、非常に見目麗しいお嬢さんの二人きりでした。 そのお嬢さんは、物心ののつかないうちに、この島へやって来たので、自分の父親の顔のほかに、人間の顔をみたことが見たことがありませんでした。
 二人は、大きな岩を () りぬいた 洞穴(ほらあな) あるいは岩屋で暮らしていました。 岩屋は、いくつかの部屋に仕切ってあって、そのひとつを、プロスペローは、自分の書斎と呼んで、そこに本を置いていました。 その本は、おもに魔術に関するもので、魔術は、当時のすべての学者たちにたいへん親しまれていた学問でした。
 プロスペローは、魔女の知識が自分にとって非常に役立つことを (さと) りました。 というのは、不思議なめぐり合わせからこの島に打ち上げられたとき、この島は、シコラックスという魔女によって魔法をかけられていました。 シコラックスは、プロスペローがこの島に着く少しまえに死んでいましたが、プロスペローは、シコラックスが自分のよこしまな命令に従わないというので、大きな木の幹の中に閉じこめていた、大勢のよい妖精たちを自分の魔術を使って解放してやったのでした。


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