エントリーNO.530
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ファウスト

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

生の意義を把握するためとあらば悪魔に魂を売りわたすことも辞さぬファウストにとって自己救済はいかにして可能だったか。 -----ゲーテは若くしてこの大作を書きはじめ、完成までにほとんど全生涯を費した。そして脱稿のあと「私の今後の生活は全くの贈り物のような気がする」といって深い悦びを語ったという。 (全2冊)

発行
岩波文庫 1992年5月15日 第45刷
著者名
ゲーテ  
タイトル
ファウスト (全2冊)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    献ぐることば
そのかみ早くわが (おぼ) ろなる眼に浮びたりしおん身ら、
さだかならぬ姿よ、おん身らはまたも近づき来ぬるか。
さらばこたびはおん身らを固く (とら) えんとや (こころ) みん。
わがこころ、なおもかの夢想にひかさるるにや。
おん身らの (ひしめ) きよするよ。さらばよし、 雲霧(くもきり) の中より
わが身の (まわ) りに浮びきて、思うがままに 振舞(ふるま) えよかし。
おん身らが群をつつみ (ただよ) 魅惑(みわく) のいぶきに、
わが胸若やぎてうち (ふる) 心地(ここち) こそすれ。

おん身ら、楽しかりし日の面影を (とも) ないきたり、
あまたの (なつ) かしき (たま) の影うかび出ずるよ。
(なか) ば忘れ去りし古き物語にも似て、
若き日の恋も友情も共によみがえりきたる。
わが悩みさらに新たに、歎きは (かつ) てさまよいめぐりし
人の世の迷い路をまたくりかえし、
(さち) の女神に (あざむ) かれ、よき日をも迎えとらで、


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