エントリーNO.527
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ゲルマーニア

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

民族大移動以前の古代ゲルマン民族のついて誌された最古の記録。古代ローマの歴史家タキトゥス(55頃-120?)は、 開化爛熟のはてに頽廃しつつある帝政ローマと対照させながら、いま勃興し、帝国の北辺をおびやかす若い民族の質朴勇健な姿を描きだす。 簡潔な筆致のなかに警世の気概があふれる。積年の研究成果を盛った訳書。

発行
岩波文庫 1997年6月5日 第24刷
著者名
タキトゥス  
タイトル
ゲルマーニア  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

 第一部  ゲルマーニアの土地・習俗
   一  ゲルマーニアの境域
 ゲルマーニアは全体として、ガッリア族、ラエティア族およびパンノニア族からは、レーヌス(ライン)とダーヌウィウス(ドーナウ)の両河によって、 サールマティア人ならびにダーキア人からは相互の恐怖により、あるいは山岳によって、分かたれている。 他の部分は大洋が広大な海岸の紆曲と島々の広漠たる領域を (いだ) いてこれをめぐり、そこに戦争が明らかにした若干の部族、部王が近ごろ人々に知られるにいたった。 レーヌス河は、ラエティカエ・アルペースの近寄りがたい急峻な峰に源を発し、軽く 紆曲(うね) って西に向い、北方の大洋に注ぐ。 ダーヌウィウス河は、アブノバ山(シュヴァルツヴァルト一帯の古名)の、ゆるやかに軽く聳える山背に起こり、〔レーヌスの流れよりも〕さらに多くの部族を訪れつつ、ついに六つの枝流に分かれて黒海に奔落し、その第七の河口は沼沢の間に没している。


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