エントリーNO.526
岩波文庫を1ページ読書
真景累ヶ淵

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

「牡丹燈籠」と並ぶ円朝の代表作は、針医兼高利貸の皆川宗悦が酒乱の旗本深見新左衛門に殺されることに始まる、 因果因縁が複雑に絡み合う怪談話。 宗悦の娘園と豊志賀、深見の息子新五郎と新吉は互いに仇敵とも知らず情痴に狂い・・・・。
解説=久保田万太郎

発行
岩波文庫 2007年3月16日 改版第1刷
作者
三遊亭円朝 (さんゆうていえんちょう)  
タイトル
真景累ヶ淵 (しんけいかさねがふち)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    一
  今日(こんにち) より怪談のお話を申し上げまするが、怪談ばなしと申すは近来大きに (すた) りまして、 あまり 寄席(せき) で致す者もございません、と申すものは、幽霊というものは無い、全く神経病だということになりましたから、怪談は開化先生方はお嫌いなさる事でございます。 それ故に久しく廃っておりましたが、今日になってみると、かえって古めかしい方が、耳新しいように思われます。 これはもとより信じてお聞き遊ばす事ではございませんから、あるいは 流違(りゅうちが) いの怪談ばなしがよかろうというお (すす) めにつきまして、 名題(なだい) 真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち) と申し、 下総国羽生村(しもふさのくにはにゅうむら) と申す処の、 (かさね) の後日のお話でございまするが、 これは幽霊が引続いて出まする、気味のわるいお話でございます。 なれどもこれはその昔、幽霊というものが有ると私どもも存じておりましたから、何か不意に怪しい物をみると、おお (こわ) い、 変な物、ありゃァ幽霊じゃァないかと驚きましたが、只今では幽霊がないものと諦めましたから、 (とん) と怖い事はございません。 狐にばかされるという事は有る (わけ) のものでないから、 神経病、また天狗に (さら) われるという事も無いからやっぱり神経病と申して、


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