エントリーNO.524
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法における常識

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

市民の権利、義務は法によって生き、法の世界は民衆の常識から生まれる。ヴィノグラドフ(1854-1925)の本書は、法の本質は何か、法の目的と手段はいかに理解されるべきか、 法はいかに形成され運用されるかを説いた万人のための法学入門である。 全体の均整、題目の配列、視野の広さ、叙述の正確、引例の適切さにおいて類いまれな傑作いわれる。

発行
岩波文庫 1983年11月20日 第13刷
著者名
P.G.ヴィノグラドフ  
タイトル
法における常識 (ほうにおけるじょうしき)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一章  社会規範
 1 ブラックストンは、一七五三年、オックスフォード大学でイギリス法についての講義をはじめるにあたり、大学におけるこの新しい試みが、十分に理由のあるものであることを説明しなければならない、と思ってつぎのようにのべた。 すなわち「紳士にすぐれた地位と余暇とが与えられているのは、紳士自身のためばかりではなく、それが一般民衆の利益にもなるからである。 ところが、紳士が、もし法についてのある程度の知識を身につけていないとすれば、紳士は、人生のどのような舞台においても、民衆に対する義務および自分自身に対する義務の、いずれをも適切に履行することができないのである」と。
 ブラックストンの時代以来、事態は急速に変動し、法の教育という面でも重要な変化が生じてきたことはたしかである。まず第一に、法について相当に考えなければならない「紳士」(gentlemmen)の範囲が、非常に拡大されてきた。 現在では、市民としての権利を行使し義務を履行しなければならない、教養ある人々がすべてそのなかに含まれるのである。法に対して関心をもち、責任を感ずる者は、法廷弁護士か事務弁護士、国会議員または治安判事だけであるとする必要はなく、 さらに県会議員だけであるとする必要さえない。


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