エントリーNO.523
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地底旅行

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

十六世紀の錬金術師の謎の文字を苦心の末解読してみると、そこにはアイスランドの火山の噴火口から地球の中心に達することができると書かれていた。 これが十三週間におよぶ地球内部への旅の始まりになった。ヴェルヌ(1828-1905)の最高傑作。挿絵多数。

発行
岩波文庫 1997年2月17日 第1刷
著者名
ジュール・ヴェルヌ  
タイトル
地底旅行 (ちていりょこう)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    1
 一八六三年五月二十四日、日曜日のこと、わたしの叔父リーデンブロック教授は、ハンブルクの旧市街のなかでもいちばん古い通りのひとつ、ケーニッヒ街十九番地にある小さな自宅に大急ぎで帰ってきた。
 女中のマルテは昼食の支度が遅れてしまったと思ったにちがいない。なにしろ台所のかまどの上では、鍋がやっとぐつぐつ煮えはじめたばかりだったのだ。
 「おやおや」とわたしは心のなかでつぶやいた。「伯父さんは世界一せっかちだからな。おなかがすいているとしたら、きっと悲鳴をあげるぞ。」
 「もうリーデンブロック様が!」と、びっくりしたマルテが、食道のドアから顔を出して叫んだ。
 「そうなんだ、マルテ。でもお昼の準備はできていなくて当たり前だよ。まだ二時になっていないんだからね。いま聖ミハエル教会の鐘が、半を打ったところさ。」
 「じゃあ、どうしてリーデンブロック様がお帰りなんで?」


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