エントリーNO.522
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クレーヴの奥方

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

道ならぬ辛いしかし清い恋に悩んでいるクレーヴ公の奥方が、夫君にそれをうちあけて庇護を求めたために、 心に悩む者をふたり生じる結果となった、悲しい純潔な恋の物語てある。 セヴィニェ夫人やラ・ロシュフコーとも親しかった作者(1634-1693)の、フランス心理小説の古く輝かしい伝統の最初の礎石ともいうべき名作。

発行
岩波文庫 1984年8月20日 第44刷
著者名
ラファイエット夫人 (ラファイエットふじん)  
タイトル
クレーヴの奥方 (クレーヴのおくがた) 他2篇  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    一の巻
 アンリ二世在位の晩年のころほど豪奢や優雅の (ふう) の栄えたのはフランスでもためしのないことである。 陛下みずから (みや) びを愛せられ容姿も端麗に、恋さえしておいでになった。 ヴァランチノア女公のディアヌ・ドゥ・ポワチエをはじめてお愛しになったのはもう二十年も前のことだったが、その寵はすこしも衰える 気色(けしき) がなく陛下の深いみ心づくしの見えるのは以前とかわらなかった。
 陛下はどのような遊芸にもたいそうすぐれておられて、毎日をもっぱらそういうことにお過ごしになるのであった。 狩猟、庭球、舞曲、馬上競技、そういった遊びが連日もよおされていた。 そのたびにヴァランチノア夫人の好みの色じるしや、頭文字の組合せ模様がその場所でいつも見られるわけである。 女公自身も、婚期をひかえている孫娘のラマルク姫に似合わしいような服装で姿をあらわした。  王妃というかたがおいでになるのでヴァランチノア夫人の存在が大目に見られているのであった。


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