エントリーNO.518
岩波文庫を1ページ読書
怪談 牡丹燈籠

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

旗本の娘お露の死霊が、灯籠を提げカランコロンと下駄を鳴らして恋人新三郎のもとに通うという有名な怪異談を、 名人円朝の口演そのままに伝える。人情噺に長じた三遊亭円朝(1839-1900)が、 「伽婢子」中にある一篇に、天保年間牛込の旗本の家に起こった事実譚を加えて創作した。改版。(解説=奥野信太郎/注=横山泰子)

発行
岩波文庫 2002年5月16日 第1刷
作者
三遊亭 円朝 (さんゆうてい えんちょう)  
タイトル
怪談 牡丹燈籠 (かいだん ぼたんどうろう)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    一
  寛保(かんぽう) 三年の四月十一日、 まだ東京を江戸と申しました頃、湯島天神の (やしろ) にて聖徳太子の御祭礼を致しまして、 その時大層参詣の人が出て 群集雑踏(ぐんじゆざつとう) を極めました。 ここに本郷三丁目に 藤村屋(ふじむらや) 新兵衛(しんべえ) という刀屋がございまして、 その店先にはよい 代物(しろもの) が列べてあるところを、 通りかかりました一人のお (さむらい) は、 年の頃二十一、二とも覚しく、色あくまで白く、眉毛 (ひい) で、 目元きりりっとして少し 癇癪持(かんしゃくもち) と見え、 (びん) の毛をぐうっと吊り上げて結わせ、 立派なお羽織に、結構なお (はかま) を着け、 雪駄(せった) 穿() いて前に立ち、 背後(うしろ) 浅葱(あさぎ) 法被(はっぴ) 梵天帯(ぼんてんおび) を締め、 真鍮巻(しんちゆうまき) の木刀を差したる 中間(ちゅうげん) が附添い、 この 藤新(ふじしん) の店先へ立寄って腰を掛け、列べてある刀を眺めて、
 侍「亭主や、そこの黒糸だが紺糸だか知れんが、あの黒い色の 刀柄(つか) 南蛮鉄(なんばんてつ) (つば) が附いた刀は誠に善さそうな品だな、ちょっとお見せ。」


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