エントリーNO.515
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啓蒙の弁証法

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

フランクフルト学派の名著。亡命先のアメリカで書かれた。 西欧文明の根本的自己批判として名高い。 〈啓蒙〉の光と闇を理論的軸にオデュッセイア論・サド論で具体的に神話の寓意や道徳の根拠を検証。 米国大衆文化や反ユダヤ主義批判によって近代の傷口を暴き現代の課題を示す。

発行
岩波文庫 2007年1月16日 第1刷
著者名
ホルクハイマー、アドルノ  
タイトル
啓蒙の弁証法 (けいもうのべんしょうほう)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    一
 古来、進歩的思想という、もっとも広い意味での啓蒙が追求してきた目標は、 人間から恐怖を除き、人間を支配者の地位につけるということであった。 しかるに、あます所なく啓蒙された地表は、今、勝ち誇った凶徴に輝いている。 啓蒙のプログラムは、世界を呪術から開放することであった。 神話を解体し、知識によって空想の権威を失墜させることこそ、啓蒙の意図したことであった。 「実験的哲学の父」ベーコンのうちには、すでにこういう諸動機が集約されている。 彼は伝統を墨守する世の大家たちを蔑んで言っている。「この手合いは始めのうちこそ、自分たちの知らないことは、別の誰かが知っていると信じているが、 いつの間にか自分たちの知らないことさえ、自分で知っているように思い込む。 だがしかし、軽信、疑いに対する反感、いいかげんな応答、教養を鼻にかけ、反対するのを憚ること、打算からくる不公正、自分の手を使った研究の等閑視、言葉の物神崇拝、部分的認識への停滞。 すべてこういった種類の態度が、人間悟性と事物の本性との幸福な結婚を妨げてきた。 そしてその代りに、人間悟性を、空虚な概念ややみくもの実験と結び合せてきた。


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