エントリーNO.513
岩波文庫を1ページ読書

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

西洋文学を貪欲に摂取し、自家薬籠中のものとして、近代ロシア文学の基礎をうち立てた〈ロシアの国民詩人〉プーシキン(1799-1837)。 簡潔明快な文章と構成で、現実と幻想の交錯を完璧に描いてみせた『スペードの女王』。 5篇の多彩な短篇から成り、ロシア散文小説の出発点となった『ベールキン物語』。 本書は、名訳者と謳われた神西清(1903-1957)の訳筆に成る、プーシキン傑作短篇集である。

発行
岩波文庫 2005年4月15日 改版第1刷
著者名
プーシキン  
タイトル
スペードの女王・ベールキン物語 (スペードのじょおう・ペールキンものがたり)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    スペードの女王

 スペードの女王は () しき下心をしめす。
                                      『新版 骨牌(カルタ) 占い』
お天気の わるい日は
皆の衆
  寄り合って
五十から 穴かしこ
百両と
  場を張った
当たったり  (はず) したり
白墨で
  しるしたり
お天気の わるい日の
皆々の
  稼ぎはこれ

 或る日のこと、 近衛(このえ) の騎兵士官ナルーモフの所に、 骨牌(カルタ) の寄合いがあった。 さすが長い冬の夜も知らぬ間に過ぎて、明け方になった。 朝の四時もすぎてから夜食の卓を囲んだ。勝った者は大いに貪欲を見せたが、でない者は 茫然(ぼうぜん) として、 空っぽの皿に対していた。やがて 三鞭酒(シャンパン) が出ると話ははずみ出し、口を開かぬ者はなかった。


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