エントリーNO.505
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時間と自由

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

ベルグソン(1859-1941)の哲学的出発を告げた時間論の古典的名著。 「意識に直接与えられた」現実を純粋な時間的持続とみなす立場から、 自由の決定論と非決定論の双方を<時間の空間化>として批判した。 時間意識の緻密な分析を通して具体的現実の復権と真の自由の顕彰を図った20世紀初頭の思想動向を代表する記念碑的労作である。新訳。

発行
岩波文庫 2001年5月16日 第1刷
著者名
ベルクソン  
タイトル
時間と自由 (じかんとじゆう)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一章  心理的諸状態の強さについて

 感覚、感情、情念、努力といった意識の諸状態は、増えたり減ったりできるものだと通常は認められている。 なかには、或る感覚がそれと同じ性質をもつ他の感覚より二倍、三倍、四倍も強いと言いうるのだと断言するひとさえいる。 もっと後で検討することにするが、こういうことを言うのは精神物理学者である。 しかし、精神物理学者への反対者でさえ、或る感覚が他の感覚より強いとか、或る努力が他の努力より大きいとかいう語り方をすることに何の痛痒も感じていないのであって、 それどころか彼らは純粋に内的な状態相互のあいだに量的な差異を設けようとしているのだ。 その上、この点に関しては、常識というものが何のためらいもなく判定を下してしまっている。 かなり暑いとかそれほどでもないとか、すごく悲しいとかそんなに悲しくはないという言い方はよくなされるわけであって、こうした量的多寡の区別が、 たとえ主観的事実や拡がりのないものの領域にまでもち込まれても、驚くひとはいないのである。


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