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エントリーNO.44
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
自己の所信を力強く表明する法廷のソクラテスを描いた「ソクラテスの弁明」。 死刑の宣告を受けた後、国法を守って平静に死を迎えようとするソクラテスと、 脱獄を勧める老友クリトンとの獄中の対話「クリトン」。 ともにプラトン(前427-前347)初期の作であるが、 芸術的にも完璧に近い筆致をもって師ソクラテスの偉大な姿をわれわれに伝えている。

発行
 岩波文庫 2008年5月23日 第94刷
著者名
 プラトン
タイトル
 ソクラテスの 弁明(べんめい)  クリトン
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

          ソクラテスの弁明
 (一)アテナイ人諸 ((1)) 、諸君が私の告発者の弁論からはたしていかなる印象を受けたか、 それは私には分からない。が、彼らの言葉はとにかく私をしてほとんど私自身をさえ忘れさせた程であった、 それほどの説得力を以って彼らは語ったのである。 それにもかかわらず彼らはひと言の真実をも語らなかったといってよかろう。 しかも彼らの吐いた多くの虚言のうちで、なかんずく私を驚かした一つの事がある。 すなわち彼らが私を雄弁家となし、その私に欺かれないように諸君は警戒しなければならぬといった事がそれである。 なぜといえば、私が口を開いて自ら寸毫も雄弁家ではないことを示せば、彼らの謬言は立ち所に実証によって私の覆すところとなるべきにもかかわらず、 なおこの言を為して自ら恥じなかったということは、彼らの最も無恥なる点と私には見えたからである---- もっとも彼らが真実を語る者を雄弁家と呼ぶとすれば格別であるが、もし彼らの意味するところがここにあるならば、 私は自ら---- もとより彼らとは別様の意味において---- 一種の雄弁家であることを認めてもよい。 今申す通り、彼らはほとんど一語も真実を語らなかったといってもいい位であるが、これに反して諸君は、私の口からは、 全真相を聴くであろう。

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