上記著作より、本文書き出し1ページを引用
第一部 老海賊
第一章 「ベンボー提督亭」に現われた老海賊
郷士 のトレローニさん医者のリブシー先生、そのほかの紳士たちが、
ぼくに、宝島のことをすっかりくわしく初めから終りまで、ただしまだ掘り残した宝もあるのだから、島の位置だけは隠して、
それ以外はすべて書きとどめておくようにといわれたので、いまペンを執っているのはキリスト紀元一七・・年だが、
話は、ぼくの父が「べンボー提 督 亭」という宿屋を開いていた時までさかのぼって、そこへ、
日焼けした、刀傷のある、年とった船乗りが現われ、泊まりこむことになった時から始めることになる。
ぼくは、まるできのうのことのように、よく記憶しているのが、かれは、船乗り用の衣服箱をうしろから手押し車で運ばせながら、家の戸口にどたどたとやってきた。
背が高く強そうで、どっしりとしていて、 栗 みたいに 褐色 の顔の男だった。
タールまみれの弁髪は、よごれた青い服の両肩に 垂 れさがり、両手はごつごつとして傷だらけで、
爪 は黒くて割れていた。片方の 頬 には、
きたない、青白い刀傷がついていた。ぼくはまた、よくおぼえているが、かれは入江をずっと見まわしながら、ひとりで口笛を吹き、それから急にあの古い船乗り歌をうたいだした。
それは、あとでも何度も聞かされたものだ。