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エントリーNO.41
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
朱雀大路の荒れはてた羅生門を舞台に展開する凄惨な人間絵巻「羅生門」、 漱石が激賞した「鼻」、いずれも今昔物語・宇治拾遺物語などに素材を得たものである。 どの作中の人物も、作者の機知縦横の筆によって、 現代のわれわれにきわめて身近な人間として描きだされている。 芥川王朝物の第1冊として編集した。  解説=中村真一郎

発行
 岩波文庫 2008年1月15日 第8刷
著者名
 芥川 竜之介 (あくたがわ りゅうのすけ)
タイトル
  羅生門(らしょうもん) (はな) 芋粥(いもがゆ) 偸盗(ちゅうとう)
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

 ある日の 暮方(くれかた) の事である。 一人の 下人(げにん) が、 羅生門(*らしょうもん) の下で雨やみを待っていた。
 広い門の下には、この男の他に誰もいない。 ただ、所々 丹塗(にぬり) () げた、 大きな 円柱(まるばしら) に、キリギリスが一匹とまっている。 羅生門が、 朱雀大路(すざくおおじ) にある以上は、この男の外にも、 雨やみをする 市女笠(*いちめかさ) 揉烏帽子(*もみえぼし) が、 もう二,三人はありそうなものである。それが、この男の外には誰もいない。
  何故(なぜ) かというと、この二,三年、京都には、地震とか 辻風(*つじかぜ) とか火事とか 飢饉(ききん) とかいう (わざわい) がつづいて起こった。 そこで 洛中(らくちゅう) のさびれ方は一通りではない。 旧記() によると、仏像や仏具を打砕いて、その () がついたり、 金銀の (はく) がついたりした木を、 (みち) ばたにつみ重ねて、 (たきぎ) (しろ) に売っていたという事である。 洛中がその始末であるから、羅生門の 修理(しゆり) などは、 元より誰も捨てて (かえりみ) る者がなかった。するとその荒れ果てたのをよい事にして、 狐狸(こり) () む。 盗人(ぬすびと) が棲む。 とうとうしまいには、引取り手のない死人を、この門へ持って来て、棄てて行くという習慣さえ出来た。 そこで、日の目が見えなくなると、誰でも気味を () るがって、 この門の近所へは足ぶみをしない事になってしまったのである。
  (サイト管理人 注 三行目 ”キリギリス”該当漢字見当たらず。)

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