エントリーNO.495
岩波文庫を1ページ読書
女中たち・バルコン

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

姉妹の女中が、夜ごと奥様と女中に扮して奥様殺害の演戯にふけり、 ついには自らを生け贄に捧げる危険な「ごっこ芝居」『女中たち』。 権力と幻惑の表象ゲームが、「幻想館」の客と娼婦の性的演戯に変換され、革命を挫折させる『バルコン』。 泥棒=詩人による「祭儀的演劇」の発する黒々しい黄金のアウラ。

発行
岩波文庫 2010年12月16日 第1刷
著者名
ジャン・ジュネ  
タイトル
女中たち・バルコン (じょちゅうたち・バルコン)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    女中たち
      登場人物
       クレール
       ソランジュ
       奥様
 奥様の部屋。ルイ十五世様式の家具。奥に窓があり、向かい側の建物の正面に面している。 右手に、ベッド。左手に、扉と洋服箪笥。 (おびただ) しい花。夕方である。 ソランジュを演じる女優は、小間使いの着る短い黒いワンピースを着ている。椅子の上には、もう一着、短い黒い服と、麻の黒い靴下と、踵の低い黒い靴が置いてある。

クレール  (スリップだけを着けて、化粧鏡に背を向けて、立っている。彼女の仕草と----片方の腕を伸ばしている----その口調は、誇張された悲劇的調子である)また手袋だわ。 いつまでやっているつもりかしらね、その手袋!何度も言っただろうに、台所へ置いておおきって!それで牛乳屋を誘惑する魂胆なんだ、それに決まっている。 いいえ、嘘をついても無駄です。流しの上に掛けておおき。いつになったらわかるの、この部屋を (けが) してはならないってことが。 なにもかも、そうよ、すべて!台所からやって来るものはね、汚物よ、 痰唾(たんつば) よ。 出てお行き。さあ、お前の痰唾を持って!おやめったら!
 この長台詞のあいだ、ソランジュはゴムの手袋をもて遊んでいる。その手袋をはめた手をうち眺め、花束にしたり、扇子に見立てたり。
 ご遠慮なく、お好きなように。急ぐには及ばないわ、そうよ、時間はあるんだから。出てお行き!
(サイト管理人 注 箪笥(=たんす) 旧漢字使用出来ず)


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