エントリーNO.482
岩波文庫を1ページ読書
博物誌

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

ほたる----草に宿った月のひとしずく!故郷シトリー村での体験をもとに、 鋭い観察眼と簡潔・的確な表現で動物たちの生態をいきいきと描きだした軽妙な短文集。 原文の凝縮された文体や巧みな比喩がみごとに生かされた訳文とロートレックの挿絵で、 ジュール・ルナール(1864-1910)独特の世界を心ゆくまでたのしめる1冊。

発行
岩波文庫 1998年5月18日 第1刷
著者名
ルナール  
タイトル
博物誌 (はくぶつし)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

     物の姿(イマージュ) の狩人
 彼は、朝早くベッドからとびおきて出かける。頭がはっきりしていて、気持ちが清らかで、からだが夏の着物みたいにかろやかなときだけだが。 べつに食べ物などは用意していかない。道々すがすがしい空気を飲みこみ、鼻を鳴らして健康なかおりを吸いこむ。 猟の道具は家に置いたまま、ただ目をあけてさえいればいいのだ。目が網の代わりになって、物の姿がひとりでにひっかかってくる。
 まず最初にひっかかってくるのは道の姿だ。この道は、りんぼくと桑の実をいっぱいにつけた 生垣(いけがき) にはさまれて、 その骨といってもいいような、すべっこい小石の群れや、破れた血管みたいなわだちの跡を露出させている。
 それから河の姿をつかまえる。河は曲がり角のところではいつも白くあわだち、柳の葉に 愛撫(あいぶ) されて眠っている。


copyrighit (c) 2011 岩波文庫を1ページ読書