エントリーNO.481
岩波文庫を1ページ読書
愛の妖精

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

フランス中部の農村地帯ベリー州を背景に、野生の少女ファデットが恋にみちびかれて真の女へと変貌をとげてゆく。 ふたごの兄弟との愛の葛藤を配した心憎いばかりにこまやかな恋愛描写は、清新な自然描写とあいまって、これをサンド(1804-1876)の田園小説のうちで屈指の秀作としている。 主人公は少女時代の作者じしんをモデルにしたものだという。

発行
岩波文庫 1984年2月10日 第52刷
著者名
ジョルジュ・サンド  
タイトル
愛の妖精 (あいのようせい)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

コッスの村のバルボーさんといえば、村の議員をしていたくらいだから、暮らし向きの悪い方じゃなかった。 二ヶ所に大きな畑を持っていて、それだけで (うち) じゅうの 食扶持(くいぶち) が出てまだその上に (もう) けが残るくらいだった。 方々の草地からは、車に何台というほど乾草がとれるし、これがまた、河岸にあって少し (あし) () られている草地を別にすれば、土地でも有名な、 一番上等の 飼料(かいりょう) だった。
 バルボーの家は 瓦葺(かわらぶき) きの立派な建物で、風通しのよい丘の上に建っていたが、 これには 収入(みいり) の多い野菜畑と、六人手間くらいの 葡萄畑(ぶどうばたけ) がついていた。 その上、 納屋(なや) のうしろには立派な果樹園----この辺では果物畑というのだが----があって、 梅だの、 桜桃(さくらんぼ) だの、 (なし) だの、 清涼茶(ななかまど) だの、いろんな果物がいくらでも出来るのだった。 それからまた、 (やしき) の周囲に植えた 胡桃(くるみ) の木は、 三里四方近在で一番古い、一番大きなものだった。
 バルボーという人は、働きもので、気立ても悪くなく、 (うち) のもののために一生懸命な人だったが、 それかといって、隣近所や村の人たちに不義理なことをするような人間ではなかった。
 バルボーにはもう三人の子供があったのだが、バルボーのお神さんは、子供を五人養うくらいの財産もあることだし、自分もおいおい年を取って来るから急がなければならないと思ったらしく、 いちどきに二人の子供、それも玉のような男の子を産んだものだ。


copyrighit (c) 2011 岩波文庫を1ページ読書