エントリーNO.462
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モーパッサン短篇選

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

鋭い観察力に支えられた、的確で抑制のきいた描写、余韻をたたえた味わい深い結末。 モーパッサン(1850-1893)は、十九世紀フランス文学を代表する短編小説の名手で、 実に三百篇以上にも及ぶ短篇を書いた。その数ある作品の中から厳選に厳選を重ねた十五篇を収録。新訳。

発行
岩波文庫 2002年8月20日 第1刷
編訳者
高山 鉄男 (たかやま てつお)  
タイトル
モーパッサン短篇選 (モーパッサンたんぺんせん)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    水の上
 昨年の夏のこと、私は、セーヌ川のほとり、パリから七、八キロのところに小さな別荘を借りて、毎晩のように泊りがけで出かけたものだった。 四、五日すると、私は近所に住む男で、年のころ三十から四十ばかりの人物と知りあったが、こらがそれまで会ったこともないほどの変人だった。 ボート漕ぎの達人にはちがいないのだが、ほとんどボート狂といっていいくらいのもので、つねに必ず水のそばか、 水の上か、あるいは水にかこまれて生活していた。 あの男はきっとボートのなかで生まれたにちがいないし、ボートを漕ぎながら最後の息をひきとるのも間違いのないところだろう。


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