エントリーNO.460
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ガアテマラ伝説集

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

マヤの神話、インディオ世界への深い共感と愛惜をこめて書きあげられた、 グアテマラのノーベル賞作家アストゥリアス(1899-1974)による《魔術的リアリズム》の傑作。 『「大帽子の男」の伝説』『「花咲く地」の財宝の伝説」』「春嵐の妖術師たち」など、古代マヤ、 植民地時代の信仰と伝説が力強く痙攣する蠱惑的な夢の精髄。

発行
岩波文庫 2009年12月16日 第1刷
著者名
M.A.アストゥリアス   
タイトル
グアテマラ伝説集 (グアテマラでんせつしゅう)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    グアテマラ
 今日はこの峠を越え、明日はあの峠を通って、荷車が町にやってくる。 山道が街路に出ると、その一角に、最初の店が見える。 甲状 腺腫(せんしゅ) をわずらっている老夫婦が店番をしているが、 さまざまの 魑魅魍魎(ちみもうりょう) をまのあたりにしてきた夫婦は驚異を語り、 ジプシーが通りかかると店を閉めてしまう。ジプシーは子供を連れ去り、馬を食い、悪魔と言葉を交わし、神から逃げるというのである。
 街路は曲がった 刀身(とうしん) のように、 (つか) となった広場に入って終わる。 広場は大きくはない。そして、広場を圧するかのように、古い表門、高雅な 古色蒼然(こしょくそうぜん) たる表門の 迫持(せりもち) がそびえている。 その周辺に (きょ) を構えた貴族たちは、司教や市長と交遊を結ぶだけであり、 その子女が司教館で貧民にチョコレートを分け与えるのを黙認する聖サンティアーゴの日以外は、労働者たちとは交わろうともしない。
 夏になると、木立は黄色の葉にかすみ、枯れた野原は古いワインのように澄みわたる。


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