エントリーNO.459
岩波文庫を1ページ読書
青年と学問

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

柳田民俗学を貫くのは「経世済民」の志であって、世の中を賢くし良くするのが学問だとする考えは終生変わることがなかった。 その主張は柳田自らの手に成った最良の柳田学入門である本書からつぶさにうかがえる。 民俗学の責務を論じた表題作、知的発見のための旅を勧める「旅行の進歩および退歩」など10篇。
解説=神島二郎

発行
岩波文庫 1984年4月10日 第11刷
著者名
柳田 国男 (やなぎだ くにお)  
タイトル
青年と学問 (せいねんとがくもん)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    青年と学問
  公民教育の目的
 最近に諸君と会談してから、はやすでに三年あまりを過ぎた。あの後日本にはいろいろの事が起り、 () い事もあったが好くない事の方が多かった。 自分としてもこの三年の間に、少々弱ったと見えて生活がかなり 重荷(おもに) である。 それにもかかわらず、かつて我々が民族の前途のために、 (かす) かなる一道の光明のごとく感じていたものが、 この三年間にもしだいに成長して、世の中は 大分(だいぶ) 明るくなってきた。 通例人の通例の努力をもってしても、以前に比べるといろいろの事物が、ややはっきりと見えるようになった。 智識の真の楽しみが認められまた求められるようになった。 学問のみが世を (すく) うを得べしということを、信ぜざるをえぬようになった。
 なるほどわが (くに) 目前の社会相は、かならずしも美しくまた晴れやかではない。 人はみなたがいに争っている。 (あざむ) きうべくんば欺かんとさえしている。 この形勢をもって押進むならば末は 谷底(たにそこ) であることは疑いの余地がない。


copyrighit (c) 2011 岩波文庫を1ページ読書