エントリーNO.446
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ハリネズミと狐

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

古い詩句に「狐はたくさんのことを知っているが、ハリネズミはでかいことを一つだけ知っている」という一行がある。 この句の真意はともかく、芸術家や思想家をこの二つのタイプに大別してみると興味ぶかい。 さて、ロシアの文豪トルストイは、というと、一筋縄ではいかない。 この複雑な人物の歴史観を探り、天才の思想的源流に迫る。

発行
岩波文庫 1997年4月16日 第1刷
著者名
バーリン   
タイトル
ハリネズミと狐 (ハリネズミときつね)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一章  ハリネズミ族と狐族
 ギリシアの詩人アルキロコスの詩作の断片に、「狐はたくさんのことを知っているが、ハリネズミはでかいことを一つだけ知っている」という一行がある。 この謎めいた言葉をどう解釈すべきかについては、学者の意見はさまざまであった。 それは、ずる賢い狐も、防御一本槍のハリネズミには負けてしまうということしか意味していないのかもしれない。 しかし比喩的に解すれば、その言葉に作家と思想家、ひいてはおそらく人間一般を大別するもっとも深い一つの差異を指し示すような意味を持たせることもできるであろう。
 というのは、一方では、いっさいのことをただ一つの基本的なヴィジョン、ある程度論理的に、またはある程度明確に表明された体系に関連させ、 それによって理解し考え感じるような人々----ただ一つの普遍的な組織原理によってのみ、彼らの存在と彼らのいっていることがはじめて意味を持つような人々と、 他方では、しばしば無関係でときには互いに矛盾している多くの目的、もし関連しているとしてもただ事実として、なんらかの心理的ないし生理的な理由で関連しているだけで、 道徳的、美的な原則によっては関係させられていない多くの目的を追求する人々とがあり、その両者の間には、大きな裂け目が存在しているからである。


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