エントリーNO.442
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ドイツ文学案内

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

たんなるドイツ文学史にとどまらず、個々の文学作品に即しつつドイツ文学の性格とゲルマン的精神の本質に迫ろうとした本書は、 刊行以来30年にわたって数多くの読者に深い感銘を与えてきた。 そして東西ドイツの統一という新しい時代を迎えたいま、戦後文学を詳述する1章を加え、同時代の文学史として読者の要望に応えうる内容とした。

発行
岩波文庫 1984年8月10日 第24刷
著者名
手塚 富雄 (てづか とみお)  
タイトル
ドイツ文学案内 (ドイツぶんがくあんない)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    序説
 世界文学ということ  わたしたちの前に世界文学というものがある。そしてその世界文学の一環として、 ドイツ文学がある。だから、われわれは、ドイツ文学の知識もえたいと思う。 こういう態度は、いちおううなずけることであり、わたしたち自身の対象への意欲を説明しているようにも思う。 わたしたちは、日本人であると同時に、世界内の存在である。われわれが世界内の事象に注意をむけるのは、当然のことである。 こうして、世界において文学の名に値するものは、われわれがその扉をたたくことを待っているのである。
 こういうふうに、普通にはわれわれは世界文学というものを、既にあるもの、われわれがそれにかかわりあう前に存在を確立しているものと考えがちである。 それには文学として一定以上の価値がなければならず、そうでなければ世界文学の名に値しないのであるが、 その価値も、その文学がそれ自体において、いうならばわれわれとの交渉から独立して、保っているように理解されることが多い。 われわれ日本人にとって世界文学とは、事実上ヨーロッパ文学を意味していると、わが国の評論家が最近も言っているのを見かけたが、それは、大体において、 この方向の考え方である。ところで世界文学という概念を自覚的に立てた最初の人はゲーテであるといわれているが、 彼の考えていた世界文学の意味内容は、上述したこととじつは違うのである。


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