エントリーNO.433
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ゴルギアス

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

ソクラテスと三人の人物との対話は、弁論術が立身栄達の術とされている現実や若い人の実利主義的道徳意識などを次つぎと明るみに出す。 プラトンは本篇によって、個人の道徳と同時に政治の問題を追求し、アテナイの現実の政治に痛烈な批判を投げかけた。 のちに「国家」において発展させられた哲人政治の思想の第一歩である。

発行
岩波文庫 1983年9月10日 第15刷
著者名
プラトン  
タイトル
ゴルギアス  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

 カルリクレス  やあ、ソクラテス、争いごとや喧嘩に加わるのだったら、あなたがたのようにすべきだと言われていますがね。
 ソクラテス  え?それではぼくたちは、諺にいうように、「祭りが終わったあとに」来たのであって、間に合わなかったというわけかね?
 カルリクレス  そうなんですよ。それも、大へん優雅な祭りでしたのにねえ。というのは、ほんのついさっき、 ゴルギアスが、いろいろと見事な弁論ぶりを、われわれにみせてくれたのですからね。
 ソクラテス  しかし、そういうことになったのは、カルリクレス、ここにいるこのカイレポンの責任なのだよ。 この人のために、ぼくたちはアゴラで、やむなく手間をとらされたものだから。
 カイレポン  いや、そんなことは何も気にしないでください、ソクラテス。 ぼくがまた、その償いはつけますから。というのもぼくは、ゴルギアスには懇意にしてもらっているのです。 だから、今がよければ今でも、またなんなら、次の機会にでも、ぼくたちはあの人の弁論ぶりをみせてもらうことにしましょう。


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