エントリーNO.411
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狂気について

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

暴力に対する嫌悪、人間の機械化に対する嫌悪、そして人間に対する愛を心に抱いて生きること---- ユマニスムを生涯の思想とした著者(1901-75)の静かな祈願のことばは、 読む者の胸に深い感動を呼び覚ます。 真の知性の眼をもって人間性の根源を洞察するエッセイ・評論23篇を収録。
(解題=清水 徹、解説=大江健三郎)

発行
岩波文庫 1993年10月18日 第1刷
著者名
渡辺 一夫 (わたなべ かずお)  
タイトル
狂気について (きょうきについて) 他22篇  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    T
  「テレームの僧院」のこと
      ----中島健蔵氏に----
 鬱蒼たる森の (ほとり) 、古城の塔を仰ぐドイツの小村アイスレーベンで、 マルチン・ルッターが呱々の声を挙げてから約十年後、「フランスの園」と言われる中部フランスの、 豊沃な原野トゥレーヌを (そそ) ぐロワール河の支流ヴィエンヌ川に近い畔の小部落ラ・ドヴィニエールで、 フランソワ・ラブレーは生まれた。 彼の一生は迫害と脱走とで点綴される。青年期にフランチェスコ派の修道院で当時禁断のギリシヤ学を密かに修めたために迫害を蒙り脱走したのを手始めとして、 度々パリ大学ソルボンヌ神学部またはパリ最高法院の追及を受けた。 医学博士でありユマニストでもある彼は、新思想に理解を有し且つこれを利用しようとしたフランソワ一世及びその一党の人たちの並々ならぬ深い庇護のもとにあったが、 彼の著書はほとんど全部、出版される度毎に、異端書危険思想書として旧教会を軸として動いていた当局からは糾弾 禁遏(きんあつ) を受けたし、 時には新教会の一方の大本山ジャン・カルヴァンからは下道畜生の書として非難された。


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