エントリーNO.408
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南無阿弥陀仏

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

南無阿弥陀仏という六字の名号が意味するものを説き明かしつつ、浄土思想=他力道を民芸美学の基盤として把え直した書。 なかでも、日本における浄土思想の系譜を法然−親鸞−一遍とたどり、 一遍上人をその到達点として歴史的に位置づけた点は注目される。 柳宗悦晩年の最高傑作であり、格好の仏教入門書である。解説=今井雅晴

発行
岩波文庫 1986年2月20日 第3刷
著者名
柳 宗悦 (やなぎ むねよし)  
タイトル
南無阿弥陀仏 (なむあみだぶつ)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    趣旨
 この一篇は「南無阿弥陀仏」という言葉が何を意味するかを、平たく語ろうとするにある。 今の若い人たちには、この六字は縁遠い 呪文(じゅもん) のようなものに響くかも知れぬ。 また時代に合わぬ古くさい信心の形だとも思われよう。しかし決してそんなものではなく、この言葉の発見こそは、人類の思想史における最も驚くべき出来事の一つだといってよい。 それに人間が考え得た宗教思想の一つの極致がここに見られるのである。
 念仏は思索にたけた 印度(インド) に発し、支那に来て実際的な信仰に熟したが、 一宗派をこの上に 建立(こんりゅう) したのは実に日本で、 しかもこの国に来て、六字の意義が最も深まり、極めて独創的な内容に達した。 不思議にも、朝鮮には大きな発達の跡がなく、日本に来てこれ以上には登れぬと思われるほどの高さにまで、思索が徹した。 しかも 吾々(われわれ) の国で (つちか) われ、育ち、熟した幾つかの思想のうち、おそらく最も深く温かいものは、 この南無阿弥陀仏の六字につつまれる宗教思想であろう。 歴史を省みると、無数の (たましい) が、この六字によって救われ、今も救われつつあるのである。 なぜそんなにも、この六字に秘力があるのか。何をそれが意味しているのか。当然、道を求める (すべ) ての人々に、その真意が () らされてよい。


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