エントリーNO.403
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変身物語

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

古代ローマの天成の詩人オウィディウス(前43-後18)が、 ストーリーテラーとしての手腕を存分に発揮したこの作品には、 「ナルキッソスとエコー」など変身を主要モチーフとする物語が大小あわせて250もふくまれている。 さながらそれはギリシア・ローマの神話と伝説の一大集成である。 ラテン語原典の語り口をみごとに移しえた散文訳。

発行
岩波文庫 1995年4月17日 第12刷
著者名
オウィディウス  
タイトル
変身物語 (へんしんものがたり) 全2冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

わたしが意図するのは、新しい姿への変身の物語だ。いざ、神々よ----そのような変化をひきおこしたのもあなたがたなのだから---- わたしのこの企てに、好意を寄せられて、世界の始まりから現代にいたるまで、とだえることなくこの物語をつづけさせてくださいますように!
世界の始まり
海と、大地と、万物をおおう天空が存在する以前には、自然の 相貌(そうぼう) は全世界にわたって同一だった。 ひとはこれを「 混沌(カオス) 」と呼んだが、それは、何の手も加えられず、秩序だてられてもいない集塊にすぎなかった。 ただどろんと重たいだけのしろもので、たがいにばらばらな諸物の種子がひとところに集められ、あい争っている状態だとしかいえないものだった。
 世界に光を与える太陽もまだなく、満ちてゆく月が新しいその (かま) をふとらせることもなかった。 大地が、みずからの重みで () () いをたもちつつ、 周囲の大気のなかに浮かぶこともなければ、海洋が、陸地のはるかな周縁にそって腕をさしのべることもなかった。 大地や、海や、大気らしきものもあるにはあったが、地は固まってはいず、海は潮の流れを持たず、 大気には光がなかった。 どのものにも固有の形はなく、おたがいどうしが邪魔しあっていた。


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