エントリーNO.385
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クオ・ワディス

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

ローマ----この頽廃の都では恋など懶い日々のほんの一興。 だが、ウィニキウスは心のすべてを傾けた。 相手はリギ族王家の娘、人質の身の上、そしてキリスト教徒だった----。 ヘレニズムとヘブライズムの拮抗を背景に、壮大な歴史ロマンの幕が上がる。(全三冊)

発行
岩波文庫 1995年3月16日 第1刷
著者名
シェンキェーヴィチ  
タイトル
クオ・ワディス (全三冊)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    1
 ペトロニウスは 正午(ひる) ごろになってやっと目がさめたが、 いつものようにひどく疲れていた。 前の日、ネロの催した宴会に出たところ、それが深夜までつづいたのだ。 しばらく前から、彼の健康は衰えを見せはじめていた。 毎朝目がさめるとなにかしびれたような感じで、考えをまとめることができないと自分でもこぼしていた。 しかし、朝の入浴と、手なれた奴隷たちのマッサージのおかげで、ゆるんだ血行が次第に早くなり、眠気も去り、 頭もはっきりして、気力がもどってきたので、湯の上がりぎわに立ち寄る 塗油室(エラエオテシウム) から出てきたときには、 まるで生まれかわりでもしたように、目は才気とよろこびにかがやいて、若返り、生気にあふれ、 典雅でしかも堂々としたその風采はあのオト(ネロの友人。妻ポッパエアをネロに奪われ、当時ルシタニア〔現在のスペインの西部〕の総督の地位にあった)でさえくらべものにならないほどで、 《 趣味の審判者(アルビテル・エレガンテイアルム) 》という世間での彼の通り名もさこそとうなずかれるものがあった。


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