エントリーNO.384
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クルイロフ寓話集

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

ロシア文学のなかに強固な伝統をもつ国民詩のジャンル、寓話。---- 帝政ロシアの重圧下に生きた劇作家・諷刺作家クルイロフ(1769-1844)は、 この文学形式に痛烈な現実批判の性格を与えることにみごと成功している。 1篇1篇が短いドラマともいうべきその作品は今日まで絶えることなく読みつがれてきた。 全203篇の散文訳。

発行
岩波文庫 1993年9月16日 第1刷
訳者
内海 周平 (うつみ しゅうへい)  
タイトル
クルイロフ寓話集 (クルイロフぐうわしゅう)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    巻の一
  1  (からす) と狐
 お世辞が卑劣で有害なものであることは、すでに世に () (ふる) されてきた。 ところが、その教訓もむなしく、おべっか使いは、相変わらず人の心をひきつけている。
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 鴉がどこかでひと切れのチーズを手に入れた。鴉は (もみ) の木に止まって、 朝食にしようとすっかりその気になっていたが、ためらって、チーズは口にくわえたままでいた。 運悪く、すぐ近くを狐が走っていた。チーズのにおいが急に狐を立ち止まらせた。 狐はチーズを見て、すっかりそのとりこになってしまった。ずるがしこい狐は、忍び足で樅の木に近づき、 尻尾(しっぽ) を振り、 鴉から目を離さずに、甘ったるく、 () びるように話しかける。
 「鴉さん、何てすてきなんだろう!何という首!何という目!まるでおとぎ話のようだ!何という羽!何というくちばし!だから、声だってすてきにちがいない! 恥ずかしがらずに歌ってごらん!鴉さん、そんなに器量よしで歌もうまけりゃ、あんたはほんとに森の王様になれるよ!」


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