エントリーNO.369
岩波文庫を1ページ読書
ゲーテとの対話

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

ゲーテを崇拝してやまなかった著者(1792-1854)は、晩年のゲーテに深く愛されてその側近くに身を置いた。 ほぼ10年に及ぶ両人の親しい語らいは、文学、芸術はもとより個人生活、諸外国の文化など多岐にわたり、 それをまとめた本書は読者もまたゲーテと共に語らっているかのような愉しさにあふれている。 ゲーテを知るための必読書。

発行
岩波文庫 1983年9月20日 第18刷
著者名
エッカーマン  
タイトル
ゲーテとの対話 (ゲーテとのたいわ) 全3冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  第一部
    まえがき
 ゲーテとの談話や対話のかずかずを蒐集したこの仕事は、大部分は、私が価値ありと、あるいは珍しいとおもった何らかの体験をかならず文字で書きうつしてみて自分のものにせずには気がすまないという、 私自身のもって生れた自然の衝動から生れたものである。
 加えて、私は、初めてあの傑出した人物と出会ったときも、またすでに彼と何年も一緒に暮らした後でも、たえず教えられることを飢え求めていたし、 私はすすんで彼の言う言葉の内容をつかもうとして、これから先の私の人生のためにもそれをとっておくべく、せっせと書きとめておいた。
 しかしながら、なんと九年という歳月のあいだ私を幸福にしてくれた彼のさまざまな言葉の溢れんばかりの豊かな充実を思い、 それにひきかえ、その中から私の文字にあらわすことのできたほんの僅かな部分をいま眺めてみると、この自分がまるで、爽やかな春の雨を、ひらいた両の手でけんめいに捕らえようとしながら、その大部分を指のあいだから漏らしてしまう子供のように思えてくるのである。
 とはいえ、書物にはその運命がある、と世の常の人の言にもあり、またこの言がその書物の成立ちや後年広い世間に出ていく場合にもあてはまるのと同様なことが、現にこの書のできあがりについても言えるであろう。


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