エントリーNO.367
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国家

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

ソクラテスは国家の名において処刑された。それを契機としてプラトンは、師が説きつづけた正義の徳の実現には人間の魂の在り方だけではなく、 国家そのものを原理的に問わねばならぬと考えるにいたる。 この課題の追求の末に提示されるのが、本書の中心テーゼをなす、あの哲人統治の思想に他ならなかった。 プラトン対話篇中の最高峰。

発行
岩波文庫 1984年5月20日 第7刷
著者名
プラトン  
タイトル
国家 (こっか) 全2冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    一
 ソクラテス  きのうぼくは、アリストンの息子グラウコンといっしょに、ペイライエウスまで出かけて行った。 女神にお祈りを捧げるためだったが、もうひとつには、そのお祭りがこんど初めての催しだったので、どんなふうに行なわれるものか、 見物してみたいという気持もあった。
 お祭りの行列は、町の人たちのもなかなか見事だと思ったが、しかしそれに劣らずひときわ見ばえがしたのは、 トラキア人たちが行なった行列だった。
 お参りもすませたし、見物も終わったので、ぼくたちは (まち) 〔アテナイ〕へ向かって、引きあげはじめた。 するとケパロスの息子ポレマルコスが、家路を急ぎはじめたぼくたちの姿を遠くから見つけて、召使の子供に、走って行って自分を待つようにお願いしなさいと言いつけた。 やがてその子が、うしろからぼくの上着をつかまえて、言った。
 「ポレマルコスがあなた方に、お待ちになってくださいと言っています」
 ぼくはふり向いて、ご主人はどこにいるのか、とたずねた。
 「あそこです」と召使の子供は言った、「あとからこちらにやってこられます。どうかお待ちになってください」


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