エントリーNO.359
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アナバシス

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

前401年、ペルシアのキュロス王子は兄の王位を奪うべく長駆 内陸に進攻(ア ナ バ シ ス) するが、 バビロンを目前にして戦死、敵中にとり残されたギリシア人傭兵1万数千の6000キロに及ぶ脱出行が始まる。 従軍した著者クセノポンの見事な采配により、雪深いアルメニア山中の難行軍など幾多の苦難を乗り越え、ギリシア兵は故国をめざす----。

発行
岩波文庫 1993年6月16日 第1刷
著者名
クセノポン  
タイトル
アナバシス  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一章
 ダレイオスとパリュサティスとの間にはニ子があり、兄はアルタクセルクセス、弟はキュロスといった。 ダレイオスは病を得て、己れの死期の迫ったのを感ずると、その二子を身近に置きたいと思った。 兄の方は 偶々(たまたま) その場に居合せたが、 キュロスは父によって総督に任じられていた統治領から呼び寄せられた。 彼はカストロス平原を集結地とする部隊の総司令官にも任命されていたのである。 さてキュロスは、自分には味方であると信じていたティッサペルネスを伴い、さらにパラシア出身のクセニアスの率いるギリシア人の重装歩兵三百を従えて東上した。 ところがダレイオスが (こう) じ、 アルタクセルクセスが王位に () くや、 ティッサペルネスは、キュロスが兄に 謀反(むほん) の志があるとして王に 讒訴(ざんそ) した。 王はそれを信じキュロスを捕らえて処刑しようとしたが、母后は王に嘆願して特赦を乞い、キュロスをその統治領に返してやったのである。
 思わぬ危難に遭い面目を失って帰任したキュロスは、今後はなにごとにつけても兄から意のままにされぬためにはどうしたらよいか、いやむしろ、できることなら兄に代わって王位に即く方策はないものか、と思案した。


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