エントリーNO.337
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ゴッホの手紙

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

ゴッホ(1853-90)が一発の銃弾で三十七歳の生涯を閉じたとき世人はその作品をガラクタとしか見ていなかった。 ここに収めた親友ベルナール宛の書簡二十二通はこうした世の無理解や悪意と戦って画業に燃焼しつくした天才の類いまれな魂の記録である。 (全3冊)

発行
岩波文庫 2007年9月14日 第58刷
編者
エミル・ベルナール  
タイトル
ゴッホの手紙 (ゴッホのてがみ) 全三冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一信            一八八七年夏
                 ルピック街五四
 このあいだ急に君を振り切って別れたのをあやまりたいと思う。この手紙でまずそれを果たして置く。 是非トルストイの(ロシヤ伝説)を読むといい。先日話したドラクロアについての記事を、すぐ見つけよう。
 晩になってから僕は、やっぱりギヨーマンの家を訪ねた。あるいはまだ君は彼の住所を知らないのではないか。 「アンジュー河岸一三番地」だ。ギヨーマンという男は、他の仲間よりはましな考えをもっている。 他の連中がみんな彼みたいだったら、お互いにいがみ合わず、また時間を無駄にせず好い仕事が出来るに違いない。
 僕は一つの確信を抱いている。何も君をしかりつけたから言うわけじゃないが、そして君もおそらく同感だろうと思うのは、 アトリエにいたのでは絵の勉強はおろか生活するすべさえも失ってしまうのを、君も感じているだろう。 だが、どうしても生活する方法を見つけるように、古くさいやり方や 誤魔化(ごまか) しなしに絵を描かなでれば駄目だ。
 君の自画像は君の顔そっくりだがあまり上出来でも、最善をつくしたものでもないようだ。


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