エントリーNO.335
岩波文庫を1ページ読書
こぶとり爺さん・かちかち山

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

編者(1899-1990)は、生涯を日本の昔ばなしの蒐集にささげ、 足跡は、北は青森から南は鹿児島におよんだ。 その膨大な昔ばなしの中から代表的なものをえらび収める。 表現も、それぞれの地方の言葉を生かしつつ、 編者によってわかりやすく書き直された。(全3冊)

発行
岩波文庫 2001年6月22日 第61刷
編者
関 敬吾 (せき けいご)  
タイトル
こぶとり爺さん・かちかち山 (こぶとりじいさん・かちかちやま)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

 とんとあるはなし、あったかなかったかは知らねど、昔のことなれば、無かったこともあった話にして聞かねばならぬ。
 瓜姫
                  -----新潟県古志郡----
 昔、 (じい) さまと (ばあ) さまとがありました。 ある年 胡瓜(きうり) をまくと、 ひと (くら) に目立ってふとい茎が一本できました。 延びることはのびたが、ふしぎなことにはむだ花ばかりで、 () り花はどうしたことか、一つもなかった。 爺さまも婆さまも、「おかしいこともあるもんじゃ、ほかの種でもまちがったんじゃないかな」というているうちに、この茎一本だけ延びてのびて、 鞍のてっぺんを越してしまったが、そこで始めてずば抜けて大きな () り花が一つつきました。 この鞍のてっぺんについた大きな成り花は、もう立派な一本の胡瓜ぐらいの大きさで、それが大きくなり、長くなり、ずんずんと下って、 地面にとどきそうになりました。「こりゃどえらい胡瓜がなったぞ」といって、 爺さまも婆さまもたいそう喜んでいました。 「こいつをすっかりみのらせて、種をとろう」と、黄色になるのを待って、二人がかりでかついで家にもって来ましたが、 重くて板の間にどしんと (おろ) した拍子に、 われて (たて) に口があいてしまいました。


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