エントリーNO.330
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戦争論

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

クラウゼヴィッツ(1780-1831)の本書は、ナポレオン1世により本質的な変貌をとげた戦争形態たる国民戦争を精密に分析して、 近代戦争の特質を明らかにした戦争哲学である。 また、戦史の理論的問題に正しい視点を提示し、 戦争と政治・戦争の原型・戦争の本性を明らかにする。 軍事専門家のみならず、エンゲルス、レーニンなどにも多くの影響を与えた。

発行
岩波文庫 1984年4月10日 第19刷
著者名
クラウゼヴィッツ  
タイトル
戦争論 (せんそうろん) 全3冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一篇  戦争の本性について
     第一章  戦争とは何か
 一 緒言
 我々はこれから戦争という問題を考究するのであるが、いまここで考察の対象となるのは、 まず戦争を構成している個々の要素であり、次にこれらの要素の集まりから成る個々の部分であり、 最後に内的関連を保つところの全体としての戦争である、つまり単純なものから複雑なものへ進むわけである。 しかし戦争の問題を論究する場合には、かかる全体としての戦争の本質をまず明らかにしておく必要がある、 この場合には部分に関する考察もさることながら、常に全体が考えられねばならないからである。 このように部分の考察と同時に絶えず全体を顧みるという遣り方は、 戦争理論においては、ほかの理論におけるよりもいっそう大切である。
 二 戦争の定義
 我々は戦争について公法学者たちのあいだで論議されているようなこちたい定義を、今さらここであげつらう積りはない。 我々としては、戦争を構成している究極の要素、即ち二人のあいだで行われる決闘に着目したい、 およそ戦争は拡大された決闘にほかならないからである。 ところでかかる無数の決闘の集まりを一体として考えるには、 二人の決闘者の所作を思いみるに如くはない。


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