エントリーNO.329
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市民の反抗

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

『森の生活』の著者ソロー(1817-62)は、自然、人生、社会改革、文学など、 様々なテーマをめぐる興味深いエッセイを著している。 国家に対する個人の良心、地球環境の保全、自然と文明の共存、情報化社会の到来---- いわば全人類的な課題が先取りされ、根本的に検討されていることに読者は気づくだろう。

発行
岩波文庫 1997年11月17日 第1刷
著者名
H.D.ソロー  
タイトル
市民の反抗 (しみんのはんこう) 他五篇  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    市民の反抗
 「統治することのもっとも少ない政府こそ最良の政府」というモットーを、 私はこころから受け入れるものである。また、それがよりすみやかに、組織的に実施されるところをぜひ見たいと思っている。 それが実行に移されるならば、とどのつまりは「まったく統治しない政府が最良の政府」ということになり、これまた私の信念にかなうわけである。 ひとびとが、このモットーを受け入れる覚悟ができたとき、彼らがもつことになるのは、まさにそのような政府であろう。
 政府とはたかだか、ひとつの方便にすぎない。ところが、たいていの政府は不便なものときまっており、またどんな政府にしろ、ときには不便をきたすことがある。 常備軍の設置に対しては、これまでもさかんに有力な反対論が唱えられてきたし、 それは世間の耳目を集めるだけの価値をもっているのであるが、つきつめて言えば、 それとおなじ反対論が常置政府に対してもなされてよいわけである。 常備軍(アーミー) とは常置政府がふりまわす (アーム) にすぎない。 その政府にしても、人民がみずからの意志を遂行するために選んだ方式にすぎないのだが、人民がそれを通じて行動を起こすことができないでいるうちに、 ともすれば政府そのものが常備軍とおなじように乱用され悪用されることになりかねない。


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