エントリーNO.325
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高慢と偏見

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

所はのどかなハーフォードシア。ベネット家には5人の娘がいる。 その近所に、独身の資産家ビングリーが引越してきた。 ----牧師館の一隅で家事の合間に少しずつ書きためられたオースティン(1775-1817)の作品は、 探偵小説にも匹敵する論理的構成と複雑微妙な心理の精確な描出によって、 平凡な家庭の居間を人間喜劇の劇場に変える。(全2冊)

発行
岩波文庫 1994年7月18日 改版第1刷
著者名
ジェーン・オースティン  
タイトル
高慢と偏見 (こうまんとへんけん) 全2冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    1
 相当の財産を持っている独身の男なら、きっと奥さんをほしがっているにちがいないということは、 世界のどこへ行っても通る真理である。
 つい今し方、近所にきたばかりのそういう男の気持ちや意見は、知る由もないけれど、 今言った真理だけは、界隈の家の人たちの心にどっかりと根をおろして、もうその男は、 自分たちの娘の誰か一人の旦那さんときめられてしまうのである。
 「ねえ、ベネット」と、ベネット氏の夫人は、ある日夫に言った、 「いよいよネザーフィールド荘園に人がはいったってこと、お聞きになって?」
 ベネット氏は、まだ聞いていないと、答えた。
 「でも、そうなんですよ」と夫人は言葉をかえした、「ロング夫人が今し方おいでになって、 すっかり話してくだすったんですのよ」
 ベネット氏は、それには返事をしなかった。
 「あなたは、誰がはいったか、知りたくないんですか?」と、夫人はじれったそうに叫んだ。
 「お前の方で話したいんだろう。聞く分には、べつに反対はしないよ」


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