エントリーNO.324
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神曲

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

地獄・浄火・天堂の3部からなる宗教的大叙事詩。 錯誤と苦悩を通じて魂の純化をもとめる人生行路を象徴している。 本書は、ゴティク式大伽藍にも比較すべき均斉調和をもつ大文学であり、 ヨーロッパ中世期を中心とした古今東西にわたる思想的背景に結びついた歴史書であり、 また人類永遠の運命を探索する人生の書でもある。 解説=木村文雄、林竹二

発行
岩波文庫 1983年11月10日 第33刷
著者名
ダンテ   
タイトル
神曲 (しんきょく) 全3冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    神 曲  ---地獄---
  第一曲
われ正路を失ひ、人生の羈旅半にあたりてとある暗き林のなかにありき
あゝ荒れあらびわけ入りがたきこの林のさま語ることいかに難いかな、恐れを追思にあらたにし
いたみをあたふること死に劣らじ、されどわがかしこに享けし (さいはひ) をあげつらはんため、 わがかしこにみし凡ての事を語らん
われ何によりてかしこに入りしや、善く説きがたし、 (まこと) の路を棄てし時、 睡りはわが身にみちみちたりき
されど恐れをもてわが心を刺しゝ渓の畫くるところ、 (ひとつ) の山の麓にいたりて
仰ぎ望めば既にその背はいかなる路にあるものをも (なほ) くみちびく遊星の光を繕ひゐたりき
この時わが恐れ少しく和ぎぬ、こはよもすがら心のおくにやどりて我をいたく苦しましめしものなりしを
しかしてたとへば 呼吸(いき) をくるしく (わた) より岸に出でたる人の、 身を危うせる水にむかひ、目をこれにとむるごとく
(サイト管理人 注 「みちみちたりき」を平仮名に。「繕う」旧字見当たらず。)


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