エントリーNO.318
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ニコマコス倫理学

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

古代ギリシアにおいて初めて倫理学を確立した名著。 万人が人生の究極の目的として求めるものは「幸福」すなわち「よく生きること」であると規定し、 このあいまいな概念を精緻な分析で闡明する。これは当時の都市国家市民を対象に述べられたものであるが、 ルネサンス以後、西洋の思想、学問、人間形成に重大な影響を及ぼした。

発行
岩波文庫 1983年9月10日 第17刷
著者名
 アリストテレス  
タイトル
ニコマコス倫理学 (ニコマコスりんりがく) 全2冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

     第一巻
    第一章
 いかなる技術、いかなる 研究(メトドス) も、同じくまた、いかなる実践や選択も、 ことごとく何らかの善(アガトン)を希求していると考えられる。 「善」をもって「万物の希求するところ」となした解明の見事だといえる所以である。
 種々の場合の目的とするものの間には、しかしながら、明らかに一つの差別が見られるのであって、 すなわち、活動それ自身が目的である場合もあれば、活動以外の何らかの成果が目的である場合もある。 目的が何らか働きそのもの以外にあるといった場合にあっては、活動それ自身よりも成果のほうがより善きものであるのが自然であろう。
 だが、実践とか技術とか学問とかにもいろいろ数多いものがあって、そのそれぞれの目的とするところもまた、たとえば医療は健康を、 造船は船を、総帥は勝利を、家政は富を、というふうにいろいろなものとなってくる。 いまもし、こうした営みの幾つかが或る一つの能力の下に従属するとすれば、----たとえば馬勒制作とかその他すべての馬具の制作は騎馬に、 そうしてこの騎馬やその他すべての軍事はさらに統帥に従属しているし、その他の場合にあっても同じような従属関係がみられる----、 そこではおよそ、棟梁的なもろもろの営みの目的のほうが、これに従属する営みの目的よりも、より多く望ましいものなのである。 なぜなら前者のゆえに後者は追求されるのであるから。


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