エントリーNO.304
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インディアスの破壊についての簡潔な報告

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

キリスト教と文明の名の下に新世界へ馬を駆って乗込んだ征服者=スペイン人たち。 1542年に書かれたラス・カサス(1484-1566)の「簡潔な報告」は、 搾取とインディオ殺戮が日常化している植民地の実態を暴露し、 西欧による地理上の諸発見の内実を告発するとともに、 この告発によって当時の西欧におけるユマ二スト精神潮流の存在を証している。

発行
岩波文庫 1983年11月20日 第7刷
著者名
ラス・カサス  
タイトル
インディアスの破壊についての簡潔な報告 (インディアスのはかいについてのかんけつなほうこく)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    この『簡潔な報告』の趣意
 インディアスの発見という偉業が達成され、スペイン人たちがそこへ赴いてしばらく暮すようになってから現在にいたるまで、 そこでは種々様々な出来事が起きた。 人類史上、これまでに見聞されたいかなる偉業も、それらと較べると、色を失い、声も出ず、忘却の彼方へ追いやられる、 それほどインディアスで起きた出来事は、ことごとく驚くべき、また直接目にしなかった人にはとても信じられないようなものであった。 その中には、罪のない人びとが虐殺絶滅の憂き目に遭ったり、スペイン人の侵入をうけた数々の村や地方や王国が絶滅させられたこと、 そのほかにもそれに劣らず人を慄然とさせる様々な出来事があった。
 司教バルトロメー・デ・ラス・カサス(カサウス)は、修道会に入ってから、 われらが主君皇帝陛下[スペイン国王カルロス一世、1500-1558、神聖ローマ帝国皇帝としてはカール五世]に報告のため宮廷に参上した折、 彼がつぶさに目撃した数々の出来事を事情に通じていない人々に話した。 話を聞いた人びとは一同茫然自失し、司教にそのうちのいくつかの出来事をぜひ簡潔な文書にまとめるよう求めた。


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