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エントリーNO.37
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
暴力を否定し、調和的な愛を強調するこの作品は、 作者最後のかつ最高の傑作で雄大な構想、複雑で緻密な構成、 人間精神の深刻な把握、また人類の苦悩に対する深い理解と愛情とをもつ。 淫蕩なフョードルを父にもつ3人の兄弟を主人公に、 悪夢のような一家の形成から破滅にいたるまでの複雑多岐な内容を短時日の事件の中に描き出す。

発行
 岩波文庫 2008年7月15日 第79刷
著者名
 ドストエーフスキイ
タイトル
 カラマーゾフの 兄弟(きょうだい)  全4冊
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

     第一編  ある一家族の歴史
      第一  フョードル・カラマーゾフ
 アレクセイ・カラマーゾフは、本郡の地主フョードル・パーヴロヴィッチ・カラマーゾフの三番目の息子である。 このフョードルは今から十三年前に奇怪な悲劇的な死を () げたため、 一時(いや、今でもやはり町でときどき (うわさ) が出る)なかなか有名な男であった。 しかし、この事件は順序を追って後で話すこととして、今は単にこの『地主』が(この地方では彼のことをこう呼んでいた。 そのくせ、一生涯ほとんど自分の領地で暮らしたことはないのだ)、かなりちょいちょい見受けることもあるけれど、 ずいぶん風変わりなタイプの人間である。というだけにとどめておこう。 つまり、ただやくざで 放埒(ほうらつ) なばかりでなく、それと同時にわけのわからないタイプの人間なのである。 とはいえ、同じわけのわからない人間の中でも、自分の領地に関する 細々(こまごま) した事務を、 巧みに処理して行く才能を持った仲間なのである。しかし、それよりもほかに芸はないらしい。 実例についていうと、フョードルはほとんど無一物で世間へ乗り出した---地主といってもごくごく小さなものなので、 よその食事によばれたり、 居候(いそうろう) (ころが) り込む折を (ねら) ったりばかりしていたが、 死んだ時には現金十万リーブリから (のこ) していた。 それでも彼は依然として一生涯、全部を通じてわからずやの一人で押し通してしまった。 くりかえしていうが、決して馬鹿という意味ではない。

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