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エントリーNO.36
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
木曾馬籠の里を舞台に明治維新の或る側面を描いた歴史小説である。 主人公青山半蔵は、代々本陣・問屋の3役を兼ねる旧家の跡継ぎ息子。 山深い木曾路にも黒船来航の噂が伝わり、 旅人の気配ただならぬ頃から物語は始まる。 藤村は、維新の下積みとなって働いた人々を描くことを意図してこの大作を書いた。   解説=猪野謙二

発行
 岩波文庫 2009年5月25日 第7刷
著者名
 島崎 藤村 (しまざき とうそん)
タイトル
 夜明け前 (よあけまえ) 全4冊
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

      序の章
       一
  木曾路(きそじ) はすべて山の中である。 あるところは (そば) づたいに行く (がけ) の道であり、 あるところは数十間の深さに臨む木曽川の岸であり、 あるところは山の尾をめぐる谷の入口である。 一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた。
 東ざかいの桜沢から、西の 十曲峠(じつきよくとうげ) まで、 木曾十一宿はこの街道に添うて、二十二里余に (わた) る長い 溪谷(けいこく) の間に散在していた。 道路の位置も 幾度(いくたび) か改まったもので、 古道はいつの間にか深い 山間(やまあい) (うずも) れた。 名高い (かけはし) も、 (つた) のかずらを頼みにしたような危い場処ではなくなって、 徳川時代の末には既に渡ることの出来る橋であった。新規に新規にと出来た道はだんだん谷の下の方の位置へと降って来た。 道の狭いところには、木を () って並べ、 藤づるでからめ、それで街道の狭いのを補った。

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