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エントリーNO.31
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
ライン河畔の貧しい音楽一家に生まれた主人公ジャン・クリストフは、 人間として、芸術家として、不屈の気魄をもって、生涯、真実を追求しつづける。 この、傷つきつつも闘うことを決してやめない人間像は、 時代と国境をこえて、人びとに勇気と指針を与えてきた。 偉大なヒューマニスト作家ロマン・ロランの不朽の名作。

発行
 岩波文庫 2007年月日 第28刷
著者名
 ロマン・ローラン
タイトル
 ジャン・クリストフ 全4冊
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

     一
                うち湿りたる濃き (もや)
                薄らぎそめて、日の光
                おぼろに透し来るごとくに、、、、、、
           −ーー 神曲、煉獄の巻、第一七章 ーーー
 河の水音は家の後ろに高まっている。雨は朝から一日窓に降り注いでいる。 窓ガラスの 亀裂(ひび) のはいった片隅には、 水の (したた) りが流れている。昼間の黄ばんだ明るみが消えていって、 室内はなま温くどんよりとしている。
  赤児(あかご) 揺籃(ゆりかご) の中でうごめいている。 老人は戸口に木靴を脱ぎすててはいって来たが、歩く拍子に 床板(ゆかいた) (きし) ったので、 赤児はむずかり出す。母親は寝台の外に身をのり出して、それを (すか) そうとする。 祖父は赤児が夜の暗がりを (こわ) がるといけないと思って、手探りでランプをつける。 その光で、祖父ジャン・ミシェル老人の赤ら顔や、硬い 白髯(しろひげ) や、気むずかしい様子や、 鋭い眼付などが、照らし出される。老人は揺籃のそばに寄ってゆく。 その 外套(がいとう) は雨にぬれた匂いがしている。 彼は大きい青い 上靴(うわぐつ) を引きずるようにして足を運ぶ。 ルイザは近寄ってはいけないと彼に手 真似(まね) をする。

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