エントリーNO.300
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学校と社会

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

デューイ(1859-1952)が人間精神の発達を研究しようとして シカゴ実験室小学校で試みた教育のリポートである。 彼は学校を小社会と考え、学校外の社会生活との関連に留意し、 子どもの自発的な活動を評価して、権威主義に安住していた伝統的な学校教育を排撃した。 本書が戦後わが国の教育改革に与えた影響は大きい。

発行
岩波文庫 1983年9月10日 第29刷
著者名
デューイ  
タイトル
学校と社会 (がっこうとしゃかい)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一章  学校と、社会の進歩
 われわれは、学校というものを、個人的 見地(けんち) から、 教師と生徒または教師と両親とのあいだの或るものとしてながめがちである。 だから、最もわれわれの興味をひくものが、自分に身ぢかの個々の子どものうえにみられる進歩、すなわち、その子の正常な身体的発達や、読み・書き・算の能力の上達や、 地理・歴史の知識の増大や、 行儀作法(ぎょうぎさほう) のよくなることや、 敏活・秩序・勤勉の習慣のことなどであるのは当然のことであって、このような標準にもとづいてわれわれは学校のいとなみを批判するのである。 それはそれとして正当なことである。 だが、こういう 視野(しや) の狭さはひろげられねばならぬ。 最もすぐれた、最も賢明な親がわが子に望むところのもの、まさにそれをこそ社会はそのすべての子どもたちのために望まねばならぬ。 われわれの学校には、これ以外のいかなる理想も 狭隘(きょうあい) であり、好ましくない。 これ以外の理想にしたがうならば、それはわれわれの民主主義を破壊する。 社会が自らのためになしとげた一切のものは、学校のはたらきをとおして、あげてその未来の成員の手にゆだねられる。 社会は、自らにかんするすべてのよりよき思想を、このようにして未来の自己にひらかれている新たな可能性をとおして実現しようと望む。 まさにここにおいて個人的見地と社会的見地とが統一される。


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