エントリーNO.299
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シュルレアリスム宣言・溶ける魚

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

「シュルレアリスム宣言」こそは20世紀の芸術・思想の出発点である。 夢、想像力、狂気を擁護して、現実の奥深くに隠された<超現実>を暴きだし、 真の生、真の自由に至る革命の必要を高らかに謳い上げる。 本書はその原書初版の構成に基づいて、自動記述による物語集「溶ける魚」を併収し、綿密な訳注を付した新訳決定版。

発行
岩波文庫 1994年10月5日 第7刷
著者名
 アンドレ・ブルトン  
タイトル
シュルレアリスム宣言・溶ける魚 (シュルレアリスムせんげん・とけるうお)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

   シュルレアリスム宣言 (一九二四年)
 人生への、人生の中でもいちばん不確実な部分への、つまり、いうまでもなく現実的生活なるものへの信頼がこうじてゆくと、 最後には、その信頼は失われてしまう。 人間というこの決定的な夢想家は、日に日に自分の境遇への不満をつのらせ、これまでに使わざるをえなくなっていた品々を、 なんとかひとわたり検討してみる。 そういう品々は、無頓着さによって、それとも努力によって、いやほとんどいつもこの努力によって、人間の手にゆだねられてきたものだ。 というのは、彼は働くことに同意したからであり、すくなくとも、運を(運と称しているものを!)賭けることをいとわなかったからである。 そうなると、いまでは、おおいにつつましくすることが人間の持ち分になる。 これまでどんな女たちをものにしてきたか、どんな出来事に足をつっこんできたかは、自分にもわかっている。 豊かだとか貧しいとかいうことはとるにたりない。 この点では、人間はまだ生まれたばかりの子どものままだし、また道義的意識への同意については、そんなものなどなくても平気でいられるということを認めよう。 いくらか明晰さをのこしているなら、このとき、人間は自分の幼年時代をたよりにするしかない。


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